バレエをなさっていらっしゃる方、なさったことのある方、一度は「RAD」っていう言葉を耳にしたことがあるかもしれません。また、転勤等で諸外国にお住まいの間、バレエスタジオに通ってみたら、指導者がRAD Registered Teacher (RAD登録教師)で、RAD試験を受験したことがある方もいらっしゃるでしょう。
RADって、何のことなのでしょうか?数回にわたって紐解いてゆきます。まずは歴史的背景から見てゆきましょう。
🩰 RADって何?〜設立と歩み〜
1. 設立について
- 発起人: フィリップ・リチャードソン(ダンシング・タイムズ編集長)
- 1920年: グレートブリテン・オペラティック・ダンシング教師協会(Association of Teachers of Operatic Dancing of Great Britain)が設立される。
2. 設立の代表的メンバー
設立は、当時の主要なバレエ流派を代表するメンバーによって行われました。
- イギリス派: フィリス・ベデルス
- イタリア派(チェケッティ・メソッド): ルチア・コルマーニ
- デンマーク派(ブルノンヴィル・メソッド):アデリーヌ・ジェネ
- ロシア派(インペリアル・メソッド): タマーラ・カルサーヴィナ
- フランス派(フランス・メソッド): エドゥアール・エスピノーザ
3. 設立の理由
① イギリスのバレエ水準の向上
- イギリスのバレエ教育の水準に問題があり、国際的なレベルに引き上げることが急務とされた。
- 自己流で教えている教師も多く、適切な解剖学の知識や、系統だった教授法を持たないために、生徒が怪我をしたり、技術が十分に発達しないといった問題が発生していた。
② 教育の指導法の標準化と質の向上
- 教師になるための資格制度や、指導技術を保証する仕組みが確立されていなかった。
- バレエの水準を高めるには、まず教師の指導法を改善する必要があるという認識があった。
4. 設立時のシラバスの開発と試験
- シラバス: それぞれの流派の知識と経験を組み合わせシラバスが考案された。
- 目的: 特定の流派のスタイルに固執するのではなく、普遍的で最も効率的かつ安全なクラシック・バレエの基礎技術を確立すること、技術の標準化。
- 対象: プロや指導者を目指す上級者向け。
- 試験: 統一されたシラバスに基づき、1921年に最初の試験が実施される。
5. 児童教育の確立
- 1923年〜1924年ごろ: Children’s Syllabusが導入される。これにより幼い生徒のための「段階的かつ安全なシラバス」が確立される。
- 哲学的変化: オペラティック・ダンシングは「プロの養成機関」から「質の高いバレエ教育の提供と教師の認定機関」へとその役割を拡大。
- これは、現在のRADの理念である「万人のためのバレエ」の基礎となる。
6. 王室との関係〜RADへ
- 1928年 最初のロイヤル・パトロン: メアリー王妃が最初のパトロン(後援者)に就任。王室とのつながりが生まれる。
- 1935年 皇室憲章の授与: 国王ジョージ5世から「皇室憲章(Royal Charter)」が授与され、名称が「The Royal Academy of Dancing」に変更される。
- 歴代のパトロン:
- 1928年〜1953年:メアリー王妃
- 1953年〜2022年:エリザベス2世女王
- 2020年以降:カミラ王妃(2020年はRAD100周年。そのため共同パトロンとして2020年に就任)
7. 国際的なネットワーク
- 1930年代: RADのシラバスと試験制度が最初に導入された主要な国々は、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、南アフリカといった主に**「イギリス連邦」**の国々。
- 第二次世界大戦後: 戦後のダンス教育の復興と拡大の流れの中で、世界各地にシラバスと教師資格制度が導入されていく。
- 現在: 13,000人以上と言われているRAD登録教師がおり、世界80ヵ国以上で、同一のシラバスと評価基準が使用されている。
8. 最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
複雑なRADの教育システムを深く掘り下げてきましたが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
次回の投稿では、RADの試験やシラバスについて、お話しする予定です。
もし、RADの試験受験についてのご相談や、登録教師に関するご質問などございましたら、お気軽にDMをお送りください。
ポラリスバレエスタジオ 丸山(RAD登録教師、RAD試験官)

